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紅の染色・復元へ

解説

教育方針イメージ

 たかさき紅の会では吉村染工場に残されていた旧型板と 新たに掘り起こして作成した新型板の両方を用いて染め復元に取り組みました。
 残されていた型板は12枚一組で 飛鶴 牡丹に蝶 菊に籬 菊花 菖蒲 麻の葉模の6種類と他に彫りかけの型板3枚がありました。そこにあった「麻の葉に撫子の丸」の模様を生かして 新たに4枚組みの新型を復刻しました。
 締め枠は京都の文献より寸法を採り 楔形の大小2基とボルト、ナットで締める現代式の両方を作成しました。型板は5・6日水に浸してから使用する。
 折り返し挟み或いは巻き畳み挟みのやり方で薄絹を8重に折り重ね、姫のりを塗って型板に挟みかさねる。薄く柔らかな生地を挟む作業は予想以上に熟練を要し工夫をこらしました。
 生地を挟んだ型板を締め枠に移し 楔或いはナットにてきつく締め、熱湯を掛け再度締めなおす。その後 赤黄色の染料をとかした熱湯を用意し 染め桶の上で 締め枠を廻しながら 柄杓にて掛けまわします。酢酸を入れ定着させた後、締め枠を外し水洗し乾かし 蒸気蒸しにて仕上げげます。
 型板の扱い 布挟み 締め具会い 色選定 作業時間 滲み 濃淡斑等様々な課題に取り組み紅板締めの染め復元に成功しました。





紅板締め再現事業記録(平成18年度)

目標イメージ



1  型板の依頼                  4月28日
  市川氏  
  高山紀世子さんと共に 吉村宅に来たり 相談する。
  既に在ったやり掛けの型板と同じ図柄にする。丸に桜麻の葉地模様
  図版をコピーする。相対2枚
  上下板及び両面彫り中板2枚  6面彫りとする

2型板の仕上がり

                     9月16日
  型板6面彫りあがり 市川氏吉村宅に持参する。
  製作過程
     ・朴の板整え 225×450  直角に立てる
     ・4枚 板を重ね止めて 製材して 溝をつける。
     ・左右の型を合わせる為 溝の形を違えて 左右一ケ所ずつつける。
     ・板の表面の製材の際の凸凹も ペーパーで調整する。
     ・型紙を澁紙にほる。
     ・板に型を写す。墨汁でステンシル用の刷毛で叩いて墨をつける。
      角の一遍を決めて合わせてセロテープで止めておこなう。
      少しの汁量で数多く叩く 汁が沁みてしまうのを防ぐ。
     ・彫り道具刀25種類以上
      Vに彫る刀 凹底さらい刀 掻き出す刀 0.3  0.5 0.7等
      カーブの曲げに合わせた刀 左右用 大小様々に組み合わせる。
      鋼 スプリング コンクリート釘 鋼哉かねのこ 傘の骨 ALC綱
     ・細かい柄から最初に手をつけた。(丸の中の花柄)
      後から三角の麻の葉模様を彫る。
     ・日程 6:30〜7:30 9 :00〜10:00 13:00〜14:00 15:00〜16:00
      一日4時間 60日 240時間


3  漆掛け                          9月22日

  茅野恒雄氏(日展、現代工芸美術家協会本会員)に依頼
  手紙にて説明 型板4枚と「よみがえる紅」古い型板2枚を宅急便にて郵送
     ・版木の側面 上下左右には漆は塗られていない。
      締める時 上下になる面は塗られていない。
     ・凸凸の合わさる間に染料が流れるので 溝には漆が詰まらない様に。


4漆がけが出来上がり返送される
                                      10月21日
  製作過程
     1生漆(木から採取しただけの漆)をガムテレピンで薄めたものを
      塗る〈前面に〉
     2同上2度目
     3透き漆(生漆から水分を取り精製したもの)を前面に塗る
     4木炭で凸部のみを研磨し平滑にする
     5透き漆の上塗り
     6木炭で凸部を研磨し平滑にする
     7生漆をガムテレピンで薄めたものを塗り和紙で拭き取る
     8同上2度目
     9生漆(薄めないもの)を塗り和紙で拭き取る。
     10乾燥させて仕上がり


5  紅板締め  染色試作作業 第1回 10月24日am10〜pm18於 染工房はるる

    参加者 市川 須田 黒田 吉村 紅の会会員6名 上毛出版 小田川
     ・市川氏製作 占め具一式 上下厚板 角材4本 万力セット

  型板 ・2日前より 版木 新(丸に花、麻の葉) 旧(鶴模様)水に漬ける
      新型板は 上下になる板が ひどく反りが入った為使用不可能となる。
      片面のみ漆塗りのため 水分の吸収度が違った為と考えられる。
      中板2枚にて作業
      旧型板は 水に漬けて4枚使用可能
     ・型板を枠に置き 生絹を水に漬けて 折りたたむも皺を広げるのに苦労する。
     ・簡単な締め道具(ナット)にてしめる。

  布  ・新板 2枚の間に4mを8枚に屏風たたみにして挟む
      旧板 4枚の間に8m(4m4m)を16枚にたたみはさむ。

  染  ・湯24リットル 塩基性染料 赤 5g 黄 5g 溶かし熱湯にする。
     ・湯桶に締め具を寝かして 溝に柄杓にて 染料熱湯を掛ける。
      溜まった液を再沸騰させて 3回掛ける。
     ・温度を下げるため しばらくそのままにしておく。
     ・締め具のまま 水桶に入れ 万力のナットをはずす。
     ・タオルにて 水を切り 張り手に掛けて 乾燥させ 蒸気蒸しをする。

  課題 1板締めの圧力が 弱かったためか 全体にぼやけている。
      2染液の掛ける回数が足りない為か全体に 赤色が薄い・
      3液の掛け方が悪いためかよく廻らず 鶴模様の中央に薄い色がでた。

  改良点 強く締める為に大きいスパナを用意する。
      板のあたる部分に四角い金具をはさむ。
      締め棒の上部に小さい棒を入れ はずす時廻りやすいようにする。
      濡れた生絹の扱いが問題なので 文献にある姫のりを工夫する。
      染液の掛ける回数を多くする。


6  試作作業  第2回           11月20日 於 染工房はるる
             参加者 吉村 市川 須田 新井 小田川 紅に会会員4名

  姫のり 作成    須田泰心氏 
     ・米を磨がずに 米が隠れる程度の水に浸して 1週間(夏4日)おく。
      発酵する。ぶくぶく泡が出て臭く酸っぱくなる。
      米粒を新しい水で軽く濯いで ミキサーでよく攪拌する。
      ミキサーが廻るくらいの分量の水をいれ米粒がなくなる程度にのめっこく
      なるくらいまで摺る。少し茶色っぽくなることもある。
     ・ボウルに取り出して コンスターチ(とうもろこしの粉)130〜150g
      粉のまま加えて よくこねる。
      混ぜてラップをかけて一晩寝かせておくと 発酵し倍くらいの量になる。
      加える水の量が多いい時は 再度コンスターチを混ぜて発酵させる。
     ・広げて干して潰して 白い粉にする。一週間くらいかかる。
     ・桶に保っておく状態の時は 上に水を張って黴を防ぐ。
     ・白い粉状の姫のりをボウルにいれ熱湯を掛け95度くらいまで上がったら
      水を差して温度を調整して液をつくる。
     ・姫のりは 人絹糸を染めた後 糊つけしてしっかりしてくつかない様に
      さばいて仕上げるときに使う。絹糸はふのりに姫のりを加えて使う。

  布    ・布折りたたみ台を作成し 姫のりを刷毛でつけて 折りたたみ 8枚目に
         板を挟むやり方で試作する。
 染     ・熱湯の染液を24リットル作り 6回板にかける。

  課題   ・新板 丸の中に染まらないところができた。
         ・旧板 無地場に斑がでた。
        ・赤色は濃く良く出た。染料の分量は良く掛ける回数を6回にすれば良い。

  改良点  ・染液を溝を良く見て 丁寧にかける。
         新型板に新しく溝を取り 染液が流れこみ易く改良する。
         姫のりの濃度を検討する。
         最初に8枚に折り重ねて 押さえとして 姫のりをつかう。
         板の上に乗せて 端を使って 折り返すやり方にする。その為に板の固定
         検討する。


7  新板改良                         12月2日
       側面を削り 染液が流れこみ易いように加工する。市川氏。


8  試作作業  第3回             12月4日  於染工房はるる
                                       参加者 須田 吉村

  布    ・布の折りたたみ板合わせと枠入れは 別の作業場でしたと思われる。
       ・布と板の合わせ台を製作した。       須田氏
       ・板幅の溝の位置に夫々適応できる仕掛けを考案した。
         板を固定し溝の押さえの木片がスライド出来るようにする。
        板よりはみ出す布の幅を棒で5mmに固定する。
       ・布端しを釘板に固定する。
        布は芯に巻いて折りたたんでおき 扱い易いようにする。
        弟1の底板を溝に合わせて固定する。
        面の模様の部分に姫のりを軽く塗る。
        布端しを釘に引っ掛け引っ張ってのばす。
        角に定規を入れて折りかえす。8枚分
        弟2の板を載せて姫のりを引いてくりかえす。
        上板をのせる。20分くらいかかる。
       ・手で板全体を持ち上げて枠にうつす。

 新板枠    ・金属ナット方式は終了とし くさび型の枠に改良製作
          ステンレス棒のナット締め
          かなり強く締められるが 同時に均等の力で締めるのが難しい
          枠を解く時も力がいって手がかかる。

 楔締め枠  ・楔締め法式は両方が木材なので弾力性が同じで濡れると
          (水分の含みが同じだから)両方増えて良くしまる。

 新楔締め枠の作成   須田泰心氏
        ・10・5cm4方角材4本で高さ61cmの柱を4隅のとする
         側面に5×8cmの穴をあける
         下から25cmの位置に 14×3cmの巾板を取り付ける。
         7cm4方の角材2本を上板おさえとする。
         4.5×3.5cmの角材2本を 穴に通す
         5cm×10cmの三角の楔4個
        ・木枠 厚底板の上に版木を乗せて 上に厚板を乗せて角材を乗せて
         横木を通し 楔を打ち込んで固定する 楔は内側から。

  版木   ・板上下合わせて5枚で5cm布8枚折4箇所32枚7.5 mの生絹を挟むと
         厚さ5.5mとなる
       ・ 12枚板で約13cmの厚さになる

  染    ・熱湯を枠に掛けて布をしめらせる
       ・染料赤5g黄色5g熱湯24リットル 柄杓で6回掛ける。
        5回目6回目に酢酸(色止め)を入れる。
        染液1回掛けると20分 再沸騰時間10分〜15分 全工程80分
        生の字を書いて回数をはかる

 課題   ・あやめ模様の版木 白模様に赤い滲みが出てぼやけた。
        無地場にも濃淡の色むらが出た。
        蒸しの後 少し鮮明になる。
 
  改良点  ・キーポイントは布の畳み方 締める強さ 染液の掛け方にある。
        ・木枠巾を型板の端まで大きくする。
         楔の穴を大きくする。外側から強く打ち込めるようにする。
        ・布折りたたみの時姫のりは白地になる部分のみ毎回押さえてたたむ。
        ・染液をゆっくり掛けて 流れて染まるよう 速度と道筋を勘案する。
         前の液が入っているところにに次の液が入るまでに空気が入る可能性が
         あり細かい模様に斑がでるのかもしれない
         柄によって掛ける場所を考える
         無地場の斑を防ぐには 薄い染料で何回も掛ける方法にするか。
         30リットルで5g5gの割合
         最初に熱い温度で染めるて斑になったところはそのままになってしまう
         ので染液の温度を下げる。 95度から 75度〜80度へ
         やかんを使ってどんどんいれるのでなく 柄杓で順々にかけると温度が
          下がって染めつきがゆっくりになるので斑になりにくい?1斗=18リットル
         染料の量 水の量 掛ける回数の関係を明確にする。
         酸性PH5で回数が多い方が堅牢度が良い。少ない染料で水量も少ない
         と上だけで中まで浸透しない可能性がある。
         濃い染料量にして水量を多くして 何回も掛ける方法にする。
       ・木組の染め湯船の製作 木或いは竹の柄杓をそろえる。

       ・吉村染工場の古い文献をあたる。

       ・蘇芳とうこんの染 及び紅花での紅絹・板締めを再現する。
       ・1疋22m 1反12m 間着一枚作成の必要な長さは
        板締め布を使う量  胴裏丈115cm×4枚 袖丈55c×4枚
        計6m80cm   約700m必要となる  1疋で3枚分取れる
        型板12枚1組の間は11回。1模様25cmとすると 220cmは
        8回折畳みとなる。1回8枚畳み。
        間着1枚分7mの場合は3.5間隔 板5枚必要
        8m分で丁度板5枚分きちんと折り畳めることになる。


9  試作作業  第4回         12月16日  於 染工房はるる
                             参加者 須田  吉村  紅の会会員4名

   布    ・模様の縁がぼける  楔の形 力強さ 締め方に問題がある。
        ・模様に斑  染液の掛け方 柄杓の速度 板の廻し方 上下左右6回
        ・無地場の斑 染料の飽和点が不足 染粉量を多くして飽和点以上にする

  姫のり  平らな皿に載せ タオルでしごいてボカシ刷毛で布を叩く

 折り畳み装置・台板の4隅と中ほどの臍に合わせた木片を固定して立て 版木のほぞと
         合わせて嵌め込む
        ・版木の板巾はほぼ一定だが 長さと厚みは夫々少しずつ違うので
         臍の仕掛けを工夫して補うのか或いはめいめいに合わせて作るか考える
         昔の板 厚さ 角12mm 模様の深さは4mm×2中心の厚み5mm
         新の板 厚さ 角15mm 模様の深さは4mm×2中心の厚み7mm
            (地白板なので白場を丈夫にした?)
        ・畳み台の固定位置に据え付ける。
         最初に付いている針に布端を挟み押さえて固定する 平芯に巻いた布を
         引っ張って渡し丸刷毛で姫のりをつける。巾棒のある側から空気をだし
         ながらのりつけをする。8枚折り重ねて2枚目の板をはさむ。4回往復
         一回に約10分
         上下中板3枚 計5枚 7m40cmmで丁度良い
        ・板の厚さ 5枚布挟み入り 6.5cm  中板3枚分 4.5cm
         上下12枚組み 17cm  中板10枚 15cm

  染     ・布並幅7m40cm 116g
         ・白湯の熱湯を掛け 布を湿らせてしばらく置く
         今回は染料の濃度を倍にする。前回は飽和度が低く(残液が透き通った
         濃くして吸収が足りないところを無くするようにした。
        ・湯船に締め具を横たえて柄杓で掛ける 横横 上下と4杯ずつ掛けなが
          ら廻して まんべんなくかける。
          4回目まで半分ずつの染湯で沸かし換えながら掛けつずけた後 5回目
          の時酢酸14ccの酢酸を入れる。6回目にも14ccの酢酸をいれる。
          酢酸を入れると目に見えて液が薄色になり 布に吸収されたのがわかる。

  枠外し  ・しばらく放置して 粗熱をとさめる。
        ・枠のまま横倒しにしてホースで水を満遍なく掛けて川の流水の代わり
         として良く周りの染料を洗い去る。
        ・板を外して素早く 水桶に移し変え濯ぐ。少し赤色が出るので3〜4回
         水を変えて洗う。
        ・晒し白布に巻き取り 水分を取り去り 張り手に掛けて干す。
        ・蒸気蒸し 60分仕上げ

  課題   ・畳み終わりの部分に近いほうに 中心に少し斑がでた。
        ・板に亀裂が入っていたところか鶴の羽のところに赤色が掛かった。
        ・赤色は鮮やかできれいに出た。

  改良点  ・畳み台の臍を移動して板毎に合うようにする
        ・布端し押さえの棒板を素早く取るために 無駄棒を一本余分に抱かせて
         先にそれを抜いて布のに触れる棒板に隙間を作ればスムーズにぬけるよ
         うに改良する。
        ・白地の汚染は 圧着が足りないのか 版木の老化 姫のりの濃度による。
        ・板はずしは 流れ水洗の方法は不完全である。
        ・掛け流したる染料液は昔は粉を足して再使用したと思われる。
        ・吉村染工場が明治35年に品評会に出した文献には板締めのやり方の
         記述は具体的には記載されていない。
        ・残されている現存の締め枠の寸法 模様による板の長さの多少 京都の
         板締めの行われた年月日などを古い文献で確かめること。


10  白絹の調査

       ・4回にわたる紅板締め試作の白絹は 夫々古い胴裏地 使用後洗い張り
         済みのものを使用した。
       ・今後一疋単位で染める時のため現在市販されている一番薄い白絹の用意。
       ・絹小沢(株)  土井芳文氏
         現在は縒りのある羽二重仕様で再加工してあるもの。中国ブラジル産糸
         群馬県産の糸も加工してある。生の節織り糸の品物は見つければ在る。
         後日 訪問して現物を見ることにする。
       ・精錬の業者 高陽精錬
              
       ・立松和平 きもの紀行 上州の絹糸 より
         世紀21  繭糸長が1500mと長いのが特徴 染色性に優れている
         ぐんま200 繭糸がほぐれ易く生糸量が多い。節が少なく極めて白い
         新小石丸 古来の小石丸を改良したもので 太さにむらのない生糸
         赤城座繰り糸 赤城の節糸 黒糸 つむぎ手により太さが違う


11  試作作業  第5回          12月23日  於 染工房はるる
                               参加者 吉村 須田 新井 紅の会会員5名

  布    ・古い板締め布の重さ 蝶模様1m74cm=22g
                  格子菊2m75cm=47g
         試作用の胴裏絹はほぼ昔の糸好絹 小節絹と同じ質量である。
         8m40cm148gの白絹を板締めにする。

  折り畳み ・押さえ棒を引き抜きやすく 臍に支えを入れた装置にして 一枚ずつ
          のりつけをしながら 8枚折り板をいれてゆく。

  染    ・色調を少し黄味がかった赤とする。昔化学染料でも 紅花に似た赤を
         目指したと思われる。 鶴の模様は古風である為。
         染粉 赤8g 黄色12g  黄味をおおくする。18リットル
         9回熱湯にて染める  半減した水量を元の18リットルに増やして
         8回目 酢酸2cc 9回目7ccの酢酸入れて吸収させる。
         黄色が多いいほど 目立ち色は薄く見える。
         染粉量 水量 掛ける回数により色相が決まる。

  課題   ・折り畳み3・4回の部分によく染まらない処が出た。
         模様のところにのり付けをしなかったところは 白場に赤が入った。
         板の折り返しはみ出し部分に 薄い赤の線がでる。

  改良点  ・版木のり付け 間の3・4回の時も良くのりつけて空気が入らない様に
        ・無地場についたのりは 白湯をかけるとき良く洗い流すつもりで掛ける。
        ・染料の量を変える 赤10g 黄色15g  80度に温度を下げて
         ゆっくり染める
         板の折山の薄い線は温度の高い染料が直接当たるため?赤が流れるから。
         8・9回めに酢酸を入れてからは熱湯にする。染足をそろえるために酸
         を2回に分ける。

  考察   ・京都紅宇蔵板締め道具 枠木の種類と寸法データを検証


12  試作作業  第6回         12月29・30・31日染工房はるる 吉村

         ・絹の前処理として灰汁(あく)漬(づけ)(下付け)をする。
         ・文献の記載
         ・灰汁に食酢を少量なめてわずか酸味を感じる程度加え 精錬した絹をこ
          の中に漬る。これをよく絞り密閉した乾燥室でよく乾かす。この工程に
          要する時間は3日間で初めの2日間は1日に3回最後の1日は2回漬け
          る。灰汁に加える酸の量は次第に減らし 5・6回目には甘みを感じる程
          度とし、7・8回目には少し苦味を感じる程度にする。灰汁に漬けた絹
          がしっとりとして柔らかく仕上がれば染色の出来もよくなる。

  灰汁漬け ・白絹 660cm116g 650cm130g 2枚行う
          1日目 ・水20リットル 灰汁500cc(ph7)+酢125cc
              灰汁4に対し酢1の割合 ph4となる。3回漬けて干す。
          2日目  水20リットル 灰汁500cc +酢 100ccph5
              3回漬けて室内に干す。
          3日目  水20リットル 灰汁500cc +酢 50cc ph6 2回干す。
         ・布がしっとりして滑らなくなる功果がでた。


13  試作作業  第7回      19年1月1日2日3日於染工房はるる 吉村

  布     ・灰汁漬け済みの白絹 6m70cc 6m60cc

  折り畳み ・2つに折り更に2つに折り更に2つに折り8枚重ねにする。

  板挟み  ・板の模様部分のみに姫のりを付け 8枚一緒に置き板の縁でしっかり

          折り2枚目3枚目の板にも表面にのりを付けて白絹をたたみこむ。
  枠入れ  ・ねじとナットにはさんで万力にて締める。

  染     ・赤5黄色5の割合の染料 70度くらいの湯でかける。
         吸い上げポンプを利用して 汲みだして6回掛け7・8回で酢をいれる

  課題   ・ねじナットの下の部分がとれてしまった。
        ・麻の葉模様の新しい版木は 水で湿らせないでしからか 再三ナットを
         締めなおししたが滲んでしなった。鶴模様は7回目の染液掛けのとき台
         が外れたためか 片側が滲んでしまった。
        ・染液は作り置きの5:5の割合の現液250ccを18リットルで溶かしたもの
         なので 黄色味かかった。


14  白絹の調査         19年1月13日 於 (株)絹小沢訪問 新井 吉村
                        土井芳文氏 日本蚕糸絹業開発協同組合理事

  種類   ・胴裏文庫(棚)白羽二重 100種類くらいある
         絹は匁 目方で値段が違う 重い方が高い。汚れ 黄変防止の対策として
         オゾン パールトン セラミック シルカノール テフロン等の撥水加工
         して付加価値をつけてあるものが多いい。
        ・ぐんまオリジナルブランド胴裏絹  商標登録してあるもの
         世紀21(パーリー加工) ぐんま200(トルマリン加工灰汁漬け加工)
         ぐんまレピア(酵素精錬)ぐんま羽二重レピア 新小石丸(酵素精錬)
         ジュエリーシルク(トルマリン加工)
         ・化学加工してない絹(素張り) 駒羽二重
           縦糸は撚糸してない横糸は 駒撚糸を使っているもの。
         ・胴裏用 比翼仕立て用 胴裏比翼紋羽二重セットにして販売
         ・その他 紋付地 長襦袢地 変わり三越 一越ちりめん地等ある。

  寸法    ・長さ 胴裏絹 8.5m
          比翼(1反)11.5m  3丈もの
          1丈 3・8m 約4mくじら尺
          1疋 25.5m(長尺) 24m(並尺)=6丈 胴裏3枚分
         ・巾  38cm 9寸5分 9寸7分 尺3分 尺9分(クイーンサイズ)

  目方     ・練上がって胴裏1枚分 8.5m 280g
           紅絹 1疋94g

  国産糸   ・純国産蚕糸 ぐんま種(碓氷社) 福井川俣地区  生産者氏名入り
          キュウテックによる検査済み 純日本の絹マーク
          外国産蚕糸 スーパーシルク
          原材料海外 織加工日本  日本の絹マーク
          ・新小石丸  純国産絹糸(碓氷製糸紡績)織 長浜一越縮緬
           染見本 無地染 ぼし 200反限定
          ・世紀21 ちりめん絽長襦袢地 黒喪服

  精錬前の絹 ・新小石丸 世紀21 レピア 固い紙のような感じ
           織問屋により薄い色が付いている。

  薄絹     ・福島産 8もんめ 10もんめ 海外糸 広幅

  折り畳み   ・長もの(52m)をヤール掛け台に渡してカットし寸法を揃える
            ロールに丸く巻き込み 外して平らにおき折りビニール袋に入れる。
            仕事台は人に合わせて夫々にある。
           綴じ飾り糸の折は以前にはやっていたが人がいなくなり現在はない。
          ・初絹の風習 正月に問屋がお得意に裏地の白絹を贈る。だるまを組ま
           せて全国発送した。


15  試作作業  第8回      19年1月20日 於染工房はるる 新井 吉村
                           紅の会会員5名 上毛出版 田村氏

  折り畳み  ・鶴模様板 23cm巾×3 厚さ1.3cm×2=71.6cm×8枚分
          5m85cmの布を71.4cm毎に印を付けて ぐるぐる巻きに畳み
          込んでゆく。(上下中2枚の場合)板の巾厚さのより布の総丈は異なる。
          ほぼこのやり方で8枚分の布を板に挟み込む方法は良いと思われる。

  板挟み   ・台板に型板を載せ 姫のりを模様部分につけ8枚折りの布をきっちり
           載せ板の端を使ってきちんと折り曲げて4枚板の間に挟み込む。

  染     ・締め具に載せ棒を通しナットにてよく締める。
          最初の布濡らしの後再度良く締める。
          染液は60度くらいに低くし5・6回目に酢酸2cc 5cc入れる

  課題    ・ほぼよく染まったが同じ部分にむらご出来た。

  改良点  ・染むらには温度をもっと下げる。飽和点を上げるため赤10g黄色15g
         に多くする。
        ・板に穴を開ける?
        ・板を1週間くらい水に漬ける。新しい板の中央と脇の漆を取り除く。
        ・染めた布に繊維が一部潰れてモアレ状態がでている。生地が厚いせいなの
         で薄い絹でする。
        ・絹小沢に世紀21 ぐんま200の薄地の方をロット52m見積もり
         福島産うす絹の発注をする。
        ・型板を点検して別の模様板で試作する。
        ・櫓型の組み立て2月中につくってもらう。


16  試作作業  第9回         1月25日26日  於染工房はるる 吉村

    白絹の灰漬け・白絹一疋 (はぎ有り)7.3mずつ3枚 伸子に張りて灰汁引き染め
        1回目灰汁のまま1リットル      2回目残液に食酢4cc加える
        3回目残液に食酢10cc加える(殆ど中性)
        4回目残液に食酢6cc加える  5回目残液に食酢8cc加える
        6回目残液に食酢10cc加える 7回目残液に12cc加える

       ・3日間かけて行う


17  試作作業  第10回      1月28日    於染工房はるる 新井 吉村

  布たたみ ・麻に丸新板4枚1組の場合
         23c×3回=69c+3c(板の厚さ)=計72c
         72c×8枚=576cm
        ・古い板の場合 5枚1組の場合(中3枚上下2枚)
         23c×4回=92+5.7(厚さ1.3c×4枚分)=97.2c
         97.2×8枚=777c
        ・12枚1組の場合 (中10枚上下2枚)
         23c×11回=253c+13c(厚さ1.3×10回分)=266
         266c×8枚=2128c(全体の長さ)
        ・72c毎に印をつけて 金棒を挟み丸く折りたたむ。

  染     ・板4枚に挟み 赤10g黄色15gの染料にて10リットル8回廻し掛けする。

  課題   ・1部に滲み有り ナットの締めは充分と思われるが色が薄い低温度の為。

  改良点  ・古い板の重なりを検証 印がついていたことを発見
         鶴=模様巾38cm 板巾42.4cm
         ぼたん=38〜40cm 46.5cm
         あやめ=37cm  42cm
         麻の葉=36.5cm  39.5cm
         菊間垣=39.5cm  46.6cm
         菊花=35〜36cm  46.5cm

  白絹    ・ぐんま200 10匁1ひき375g 1反150g
         と福島川俣7匁〜6匁の薄絹6疋単位 3巾46m〜52m
         を絹小沢に発注する。数量を決める。
         福島絹 2ロット ぐんま200 2疋


8  試作作業  第11回 2月11日 於染工房はるる 新井 吉村 黒田 豊田会員3

  締め具2基作成 角田誠一氏
           ・欅材12本使用 楔8個 紅于に残された資料と同寸法にて作成
           ・型板1組用 3組用 楔打ち込み型

  型板      ・菊に井桁 丸に麻の葉  8日間水に漬ける

  布折り     ・板巾23.6 厚み1.2 計24.8×8枚×3回分=596cmの布を
            74.4cmの長さで8巻き折りたたみ 4枚板の中2枚に挟む。
           ・姫のりの濃度を 200cc5gに濃くする。
            漆面に水滴ではじかない程度にする。

  染液濃度の確認 ・赤 対 黄色  5対5   むらが出た
                  10対10  赤が強い
                   8対12  黄色が強い
                  10対15  薄き赤
           菊に間垣 8対8  丸に麻の葉 10対12にする。

  染        ・70〜80度にする 吸引にポンプを使う
  課題      ・板のずれが出た(菊に間垣) 滲みが出た(丸に麻の葉)
            縦線の薄染は 脇も念入りに染液を掛けたので無くなった。

  改良点     ・布が厚いので 4枚おりにしてみる
            7対7の割合でする
            楔の位置の三角の打ち込みを考える
           ・成功した場合 吉村染工場の目覚め 眠りから覚めた 生き返る


19  試作作業  第12回         2月25日 於工房はるる 新井 吉村 会員5名

           ・灰汁漬け 6回済みの布 5m 7mを使う

  布折り畳み  ・台を使って 左右に折り畳む。緑の棒を脇に挟むやり方
            ボウル紙を芯にして折りたたむ寸法をあらかじめ計算して長さを
            決め 布を巻きつけてゆくやり方  両方を試してみる
           ・新板  4枚重ねたたみ 板4枚
            旧板  6・4・3・2・1・1・2・3・6枚挟み 板10枚
           ・姫のり 500cc5g 煮る 2倍3倍薄め液を作る
            順々に濃く 薄く 薄薄く のりを板に付ける。

  枠締め     ・金具締めも 楔締めもよく締めること。
            白湯を掛けた後も再度締めなおすこと。

  染      ・12リットル 8g8g 5回かけ6回酢酸2cc7回5cc 8回まで
          18リットル 10g10g 同上   温度を上げて染める。

  課題     ・新板の染めが初めて良くできた。旧板は脇と中に少しむらがあるが
          よく出来て 皆で万歳する。


20  白絹の購入   2月28日
          絹小沢株式会社 担当 土井芳文氏 納入 1反 4もんめ絹=75g
                         6もんめ絹=112.5g
                      (昔の絹は1反94g)
          ・6匁 正絹羽二重絹 91cm巾×46m 2本   40cm巾カット済み
          ・ぐんま200羽二重絹52m(水張染下用)2本


21  試作作業  第13回  3月4日  於 染工房はるる 新井 吉村 会員5名

        ・薄羽二重   6m65cm 丸に麻の葉 新板4枚 6枚重ね
              18リットル 5g5g 8回掛け 6・7回酢酸  斜め水切り
        ・ぐんま200 7m 鶴模様 旧板 8枚 4枚重ね

  課題   ・鶴模様にまだらが出た。丸に麻の葉はうまく出来た。
        ・絹地の薄さ厚さによる。
         折り畳みの時 板脇に棒を入れ しわが出ないように注意する。


22  試作作業  第14回     3月11日  於染工房はるる 新井 吉村 会員5名

  布     ・薄羽二重  9.48m 菊に間垣 旧板7枚(5枚+上下2枚)
         布 8枚重ね 118.5cmのボール紙にぐるぐる巻き
        ・薄羽二重  10m 鶴模様  旧板10枚(8+上下8枚)
         布 6枚重ね 1枚1枚折りたたみ法

  染    ・5g 5g  18リットル
 
  課題   ・菊に間垣は よく出来た
         鶴に なかむらが出た 染料濃度が薄かった。ゆっくり大きく掛ける。


23  試作作業  第15回 3月23日於 群馬県繊維工業試験場 新井 吉村 会員9名

     紅板締めの技法 公開ワークショップ    参加者60名

     飛び鶴 麻の葉なでしこに丸 の型板にて白絹のたたみ 枠締め 染めの行程を行う
     染に横線が出る。また締めが甘くて 滲んだところが出た。


24  試作作業  第16回     3月31日 於 染工房はるる 新井 吉村 会員7名

  布  薄羽二重 麻の葉 板4枚 70cmの長さにぐるぐる巻き 8枚重ね
     角にステンレス棒を活用して きれいに板に挟む。5g5g液8回掛け
     5g100ccの濃い利めののり漬け  ボルト枠
     飛び鶴 板7枚中5枚 1枚ずつ畳みかた。7g7g 液9回掛け

  課題 脇の色代わりを防ぐため 横に当て布をする。サイドを集中的に掛ける。
     ゆっくりと液を掛ける 櫓をよく揺すって 液をながす。
     2枚とも よく出来て一同 成功をよろこぶ。


25 2枚重ね間着物 作成                       4月15日    吉村
      本場浜縮緬 5反 草木染め  小鮒草 ロッグウッド アルミ媒染
      ぐんま200 羽二重絹 50m 紅染め 紅絹
      縫製 仕立て依頼  外所祐子氏

  1  復元2枚襲 着物  表着物 紫地 浜縮緬 紅絹裏
               間着物 紫地 胴裏紅板締めあさのは丸になでしこ模様
  2  復元2枚襲 着物  表着物 黄色地 浜縮緬 紅絹裏
               間着物 黄色地 胴裏紅板締め 飛鶴模様
  3  復元1枚  間着  間着物 黄色地 胴裏紅板締め 菊に籬 模様

                               以上

                         たかさき紅の会     吉村晴子 記録





たかさき紅の会

代表 吉村晴子

群馬県高崎市

e-mail:
beninokai@beniitajime.jp

Webサイト:
http://beniitajime.jp/